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映画化されて文庫版もあるらしいけど、
図書館で借りたのはハードカバー本だったので、リンクこっちで。
で、感想。
ひと言でまとめれば「きっつー」w
翻訳物にはありがちな欠点なんだが、
訳す人が「文章書き」ではなく「語学技術者」寄りだと、
非常に読みにくい日本語になるorz
残念ながら、この本はちょいとそんな印象。
加えて、原書どおりと思われる構成も不親切なのだ。
どこにでもいそうな駄馬だったシービスケットが名馬となるまでが、
はっきり言って長い。
1930年代後半、世界恐慌ただなかのアメリカ。
そんな時代から、
自動車時代の先駆者である馬主ハワードの半生
西部開拓時代を引きずる無口な調教師スミスの変人ぶり、
陽気で無鉄砲で文学好きな騎手ポラードらの苛酷な生活、
そんなものが延々語られるんである。
正直、馬のドラマを求めてページを開いた身には、
「……うん、背景はもうわかったから、話まだ始まんない?」
って感じなんである。
これを越えてようやく、
下部レースでとろとろしているところを見出したスミス、
スミスの言を信じてぽんと買い取る気前のいいハワード、
個性を理解し鞭を使わないポラードという、
自分を愛する3人の男たちに支えられながら、
シービスケットが才能を開花させていくドラマにたどり着ける。
……のだが、この試練を乗り越えられずに古本屋に行く人が、
3割くらいはいそうな気がするw
いざ物語が始まっても、案外と「レースそのもの」の描写は少ない。
シービスケットの、
信じられない速さのタイムだったり、
調教相手をからかう勝負根性(というか意地悪っぷり)だったり、
横になって眠り長距離移動もこなすのんきさだったり、
重馬場に対する弱さだったり。
その間を埋めるのが、
60kg近い斤量を背負わせる委員やえげつない取材陣を出し抜き、
なんとか秘密調教しようとするスミス、
名馬の馬主であることを楽しむ無邪気な金満家ハワード、
怪我や貧乏等さまざまな危険と隣り合わせのポラードら騎手といった、
これまたレース外の描写なんである。
前述したとおり文章も構成も「きっつー」なんだが、
この人間ドラマもまたきっつい。
人間はこんなにも浅ましい存在なのですかあーめん、と、
思わずつぶやきたくなっちゃうエピソードがゴロゴロしている。
無責任なマスコミや容赦ない騎手同士のやりとりなんて、
軽く人間不信になれそうだw
さらには騎手の致命的な落馬事故が、
肉体的な意味でかなりキツい。
脚が、脚がそんなことにいい((((;゚Д゚))))
そんな感じで、
第二次世界大戦前夜の競馬界の雰囲気は存分に味わえるんだが、
シービスケットがいかに強く、桁外れで、
人びとを熱狂させた馬だったかという点になると、
なんだかちょっと物足りない。
しかし、1歳下のこれまた歴史的名馬、
ウォーアドミラルとの一騎打ちレースは燃えた!
写真もあるのだが、
このウォーアドミラル、本当にきれいな馬なのだ。
それに比べてシービスケットは、
牛追いポニーと言われたような冴えない馬。
瞬発力に優れた先行馬ウォーアドミラルに対し、
シービスケットは中ほどを進んで最後に抜き去る差し馬。
だというのに、レースをしたがらない相手の条件に譲歩しまくり、
わざわざアメリカ横断して相手地元の東部へ出向いた上、
先行馬が絶対有利のマッチレースで、
そのシービスケットが勝っちゃうのだ!
そして最後の挑戦、サンタアニカ・ハンデ。
2度の重症から立ち直ったポラードとともに、
自分の怪我も克服してよみがえった7歳のシービスケットは、
現役馬としては高齢にも関わらず、
やっぱり最大の斤量を背負わされてしまう。
ポラードの体力・技術も不安視されている。
……くーっ、燃える!w
人間関連の描写をせめて半分にしてくれていたら、
もっとすっきりわかりやすい本だったと思うのだがw
ま、フィクションじゃなくてノンフィクションなんだから、
このくどさは仕方ないのかもしれないが。
私は馬が好きで、競馬も好きだ(やらないけど)。
だからシービスケットという名馬をこの本も好きだ。
私の本棚にあってもいい。
……が、後でまた読み返すかどうかは、微妙な本かもしれないw
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