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![]() | 青木 玲 ¥ 1,835 |
サブタイトルは『優駿になれなかった馬たちへ』。
むしろこっちをメインタイトル、
いや、唯一のタイトルとすべきだったと思う。
少なくとも、メインタイトルを期待して読むべき本ではない。
子供を産む役目を負った牝馬と、
ビッグタイトルを獲って種馬になって
しかも優秀な仔を次々と送り出すごく一部の牡馬をのぞけば、
「たいていの競走馬は、引退後、幾重にも売られて肉になります。
ひどいじゃないですか、かわいそうじゃないですか」
ということを言いたいだけの本かな、と思った。
スミマセン、斜め読みで。
しかし、多少は競馬を知っていて、
なのにいまさらその事実にショックを受ける人なんて、いるんだろうか。
いるとしたら、よっぽど若くて純真……いや、
あまり物事を深く考えない人だけじゃないだろうか。
あれだけの数の馬が毎年出てきて、新馬戦を戦うのだ。
その一方で、10歳を越える競走馬なんてお目にかかることはない。
観光地で馬車だの引馬だのになっている馬なんて数える程度だし、
主な第二の人生、いや馬生の場と思われる乗馬クラブにしたって、
そうあちこちにあるものでもない。
自分が乗馬をやっている、またはやっている人間が身近にいるって人は、
まあ多数派ではないだろう。
馬にたいして関わらない一般人がよく目にする馬。
それは競走馬であり、もうひとつは「馬刺」じゃなかろうか。
熊本・長野、あと山梨だのの名物扱いになってはいるが、
いまやそこらの居酒屋でも普通に食べられる。
だけど肉用馬牧場なんて知ってる人は滅多にいない(と思う)。
少なくとも私は知らない。
消えていく競走馬がどうなるかは、アレだ、
ときどき映像が流れたりする牧場の牛や豚がその後どうなるか、
あんまり追及しないのと同じ心理だ。
そうじゃないと、
今晩のすき焼きだの豚の生姜焼きだのがおいしく食べられなくなる。
はたまたスーパーの精肉売り場の前で泣き出したりしようものなら、
まあそれはとても心優しく穢れのない天使のような心かもしれないが、
残念ながらここは天界ではなく世知辛い人間社会、
「うんうん、ちょっとあっちへ行こうね」ということになってしまう。
「ばっっかじゃねーの」とは言われなさそうなだけ、
現代という時代はまだ心優しくなっていると思うが。
ヒトという生きものは最大の雑食動物だと思っている。
チンパンジーがサルを狩る光景はかなり残酷だが、
あれはヒトが日ごろ隠して忘れようとしている、
自分たちの根底にあるものと同じだと思っている。
命は厳しくて、他の命を食わなきゃ死ぬのだ。
だから、鯨を食べようが犬を食べようが猫を食べようが、
(私自身が食べるかどうかは別として)
そのことで他人を非難する気はない。
馬もまた然り。
ただ、文明を築き上げ、野生動物のくくりを超えつつある存在としては、
他の命を肉とする過程で、
「動物福祉」(という言葉が本作に出てきた)を守るべきかな、
とは思っている。
それも、自分たちの良心を満足させるためとしてだ。
そういう意味では平等主義なので、
この本の姿勢が馬に偏っているように感じられて、
あまり共感できなかった。
スミマセン、ほんと斜め読みで。
最初から肉目的で繁殖・飼育される牛や豚、
競走馬として繁殖・飼育・そして使用後に肉利用される馬。
「愛馬」という言葉はあっても「愛牛」「愛豚」はないんだよなー、
なんてことを考えてみたり。
あと、卵を生まされまくったあげくに他の仲間がサボれば一蓮托生、
卵利用から肉利用へと転落させられてしまう鶏はどうなのかなとか。
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